メール添付、無料ストレージ、NASを変える前に
社内ファイル共有を見直す順番
ファイルが見つからない、どれが最新版か分からない、社外共有のたびに確認が増える。こうした状態になっても、最初にすることは新しいサービスの比較ではありません。
新しいサービスを比べる前に、今の方法のどこで作業が止まっているかを一つ調べます。困りごとを絞ると、メール添付、無料ストレージ、NASを続けるか、保存先を変えるかを判断しやすくなります。
公的情報の確認日:2026.08.30
困っていることを一つに絞る
「ファイル共有を改善したい」だけでは、先に直す場所が決まりません。
同じファイル共有の問題に見えても、最新版が分からない場合と、退職した人のアクセスを止められない場合では、先に直す場所が異なります。サービスの機能を比べる前に、現在の困りごとを一つ選びます。
次の中から、作業への影響が最も大きいものを一つ選んでください。
- 同じ内容のファイルが複数あり、どれが最新版か分からない
- メールで送り直すたびに、似た名前のファイルが増える
- 社外の誰に共有しているかを一覧にできない
- 個人のアカウントと会社で管理するアカウントが混在している
- 異動や退職のとき、アクセスを止める手順が決まっていない
- 削除や上書きのあと、どこまで戻せるか分からない
- NASや社内サーバーの管理が一人に偏っている
- 複数拠点や社外から利用するたびに、個別の対応が必要になる
複数当てはまる場合も、最初に扱う問題は一つにします。最も頻繁に起きるものか、起きたときの影響が大きいものから確認すると、必要な機能を絞りやすくなります。
よく使うファイルを一つだけ追う
次に、見積書、会議資料、商品資料など、普段よく扱うファイルを一つ選びます。
そのファイルが作られてから保管されるまでを、次の順に書き出してください。
- 誰が最初のファイルを作るか
- 最初にどこへ保存するか
- 社内の誰へ、どの方法で共有するか
- 社外へ渡す場合、誰が共有を許可するか
- 修正したファイルをどこへ戻すか
- どれを確定版とするか
- 作業終了後にどこへ保管するか
- 誤って削除したとき、誰が戻すか
同じ会社の中で答えが人によって異なる場合は、保存先だけでなく、作業手順が共有されていない可能性があります。
新しいサービスを導入しても、確定版の置き場所や命名方法が決まっていなければ、似たファイルが増える問題は残ります。まず一つのファイルについて、作成から保管までの流れをそろえます。
今の方法を続けられる条件を比べる
メール添付、無料ストレージ、NASには、それぞれ続けやすい条件があります。今の方法で共有相手や確定版、権限、復元手順を管理できているなら、すぐに変える必要はありません。
| 現在の方法 | 続けられる状態 | 見直すきっかけ |
|---|---|---|
| メール添付 | 送る相手と回数が限られ、確定版を共通の保存先へ戻せる | 修正のたびに別ファイルが増え、最新版や送付先を追いにくい |
| 無料または既存のクラウドストレージ | アカウントの持ち主、共有相手、権限を把握し、異動や退職時に処理できる | 個人アカウントが混在し、共有先やファイルの引き継ぎを一覧にできない |
| NASや社内ファイルサーバー | 管理担当、保守、バックアップ、復元、機器更新の手順が決まっている | 管理が一人に偏り、故障時の対応や社外利用の負担が大きい |
メール添付だから直ちに変更する、無料だから業務に使えない、NASだから古い、と一律に決める必要はありません。
利用人数、扱うファイル、社外共有の回数、管理担当者の負担を比べ、今の方法で管理を続けられるかを判断してください。
共有、権限、バックアップを分ける
ファイルを扱う仕組みを見直すときは、共有、権限、バックアップを分けて考えます。
共有
誰と同じファイルを扱うかを決めます。
- 社内だけで利用するか
- 取引先や外部スタッフとも共有するか
- 同時に編集する必要があるか
- 一時的に渡すだけか、継続して共同利用するか
権限
誰が何をできるかを決めます。
- 閲覧だけでよい人
- ファイルを追加、更新できる人
- 削除できる人
- 社外共有を作成できる人
- 利用者や権限を管理する人
- 異動や退職時にアクセスを停止する人
すべての利用者に同じ権限を与えるのではなく、実際の作業に必要な範囲を先に書き出します。
バックアップ
何が起きたときに、どこまで戻したいかを決めます。
- 誤って削除したファイルを戻したい
- 上書き前の状態へ戻したい
- パソコンやNASが故障しても業務を再開したい
- 一定期間前のデータを残したい
- 保存先そのものが利用できない場合に備えたい
ファイルを共有できることと、削除や上書きの前の状態へ戻せることは別です。履歴、ごみ箱、世代管理、別の保存先への複製など、どこまで戻せるかを切り分けます。
バックアップだけが現在の問題なら、ファイル共有サービスを変える前に、保存先、実施頻度、管理者、復元手順を見直す方法もあります。
必要な条件を決めて、少人数で試す
候補となるサービスを探す前に、必要な条件を三つに分けます。
| 区分 | 書き方の例 |
|---|---|
| 必須 | 異動や退職時に管理者がアクセスを停止できる |
| 必須 | 社外共有を無効にできる |
| 必須 | 誤って更新または削除したファイルを戻せる |
| あれば便利 | 接続する端末や場所を制限できる |
| あれば便利 | 操作履歴を管理者が確認できる |
| 今は不要 | 現在使っていない業務アプリとの連携 |
| 今は不要 | 必要量を大きく超える保存容量 |
「高機能であること」ではなく、「自社の作業を完了できること」を合格条件にします。
無料トライアルや試用環境がある場合は、管理者一人だけで確認せず、普段ファイルを扱う2〜3人で次の作業を試します。
- 管理者と一般利用者を分ける
- 閲覧だけのフォルダーと、編集できるフォルダーを作る
- 社外共有を作成し、あとから無効にする
- ファイルを更新または削除し、戻す手順を確認する
- 利用者を停止し、アクセスできなくなるか確認する
- 普段扱う大きさのファイルを送受信する
- 保存したデータをまとめて取り出せるか確認する
- 操作に迷った場所と、必要になった問い合わせを記録する
重要な顧客情報や契約書を使う前に、機密情報を含まないテスト用ファイルで一通りの手順を試します。
今日、20分で確認すること
最初からすべての保存先を調べる必要はありません。次の五つだけを書き出します。
- 普段よく扱うファイルを一つ選ぶ
- そのファイルが作成されてから保管されるまでを追う
- 現在最も困っていることを一つ選ぶ
- 今の方法を続けられる条件を三つ書く
- 新しい方法に必要な条件を三つ書く
保存先を変えること自体を目的にせず、今の方法で管理できない作業が明確になってから、必要なサービスを比較します。
参考にした公的資料
バックアップ、アクセス管理、クラウドサービスの利用条件を詳しく確認するときは、次の公的情報が参考になります。
- IPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」
- IPA「日常における情報セキュリティ対策」
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」
- 個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドラインに関するQ&A」
個別サービスの機能、保存期間、業務利用の条件、料金は変わることがあります。候補を絞った段階で、提供元の公式ページと公式ヘルプを確認してください。